研究概要 |
日本の動物相の起源と系統進化を解明するため,陸生および海生の代表的動物種とそのアジアにおける近縁種の分析試料の収集を中心に研究を進めた.陸生動物では,哺乳類のツキノワグマ,ニホンジカ,ニホンイノシシ,は虫類としては,マムシ類,ハブ類,両生類としては,イモリ類,軟体動物としてはカワニナ類を重点的に日本各地のみならず,中国大陸,韓半島からも収集した.海生動物では,軟体動物のハマグリ,カキ類,カサガイ類,アワビ類,エゾバイ類の分析試料を日本およびアジア大陸沿岸から収集した.これらの分析試料からDNAを抽出し,PCRによるDNA断片の増幅と塩基配列決定を進めた.系統解析が進んだハマグリ類,エゾバイ類については,その系統進化について8月にウィーンで開催された国際軟体動物学会で発表した.また,琉球列島の生物相を代表するハブ類については,祖先種の渡来と琉球列島における固有化の過程を,6月の日本古生物学会のミレニアムシンポジウムで発表した.また,日本の脊椎動物相の起源を古生物学的に究明するため,中国安徽省の新第三系-第四系の洞窟堆積物中のげっ歯類を中心とした小型脊椎動物化石の発掘調査を行い,種の時空分布に関するデータの収集を行った.この調査の過程で,琉球列島の生物相の起源の有力な候補者と考えられる淮南大居山の前期更新世の哺乳類・は虫類動物群が発見された.今後の詳細な検討が期待される.
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