研究課題
本研究は、ラン藻Synechocystis sp.PCC 6803を用いて低温センサーと低温適応の分子機構を解明することを目的としている。本年度においては以下のような進展がみられた。1.セリン・スレオニン・キナーゼ(Spk)が低温シグナル伝達成分であるということを発見した。Spkは真核生物のシグナル伝達において重要な役割を担っていることが知られている。しかし、Spkは原核生物にも存在するが、その信号伝達における役割は不明であった。我々は先ずSynechocystisのゲノムに存在する12種のSpkの遺伝子を順次破壊して、遺伝子破壊ライブラリーを作成した。次に低温誘導性遺伝子の発現に対する個々の変異株の効果をDNAミクロアレイ法を用いて解析した。その結果、12種のうちのSpkDとSpkLが低温シグナル伝達に関わる因子であることが明らかになった。この成果は原核生物においてSpkの信号伝達における役割を明確に示した最初の例である。2.DNAの高次構造(スーパーコイリング)は温度等の環境により変化する。我々はDNAのスーパーコイリングを促進するDNA gyraseの阻害剤が、低温誘導性遺伝子の発現に著しい効果を示すことを発見した。この事実は、低温誘導性遺伝子発現の際の低温検知には、DNAの高次構造変化も直接かかわっていることを示唆している。3.低温検知と低温シグナル伝達には複数の因子が関与している。これまでに得られた成果から、低温検知とそのシグナル伝達には、ヒスチジンキナーゼHik33、レスポンスレギュレーターRre26とRre31、セリンスレオニンキナーゼSpkDとSpkLの因子およびDNAの高次構造が関与していることを明らかにした。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (7件)
Microbiology 151
ページ: 447-455
The Journal of Biological Chemistry In press
Plant Physiology In press
The Journal of Biological Chemistry 279
ページ: 53078-53086
ページ: 13234-13240
Plant Physiology 136
ページ: 3290-3300
Biochimica et Biophysics Acta(Biomembrane) 1666
ページ: 142-157