放線菌の二次代謝、形態分化は、A-ファクターに代表される低分子ホルモン、AfsK/AfsRに代表されるタンパク質リン酸化により制御される。本年度の成果を要約すると以下のようになる。 (1)A-ファクター制御カスケード内の重要な転写因子をAdpAのDNA結合様式、二量体化ドメインの構造、結合コンセンサス配列を決定し、AdpAがAraC/XylSファミリーのサブファミリーを成すことを提唱した。 (2)ArpAの標的遺伝子は、S.griseus内に唯一adpAであることを証明した。 (3)2種のトリプシン型プロテアーゼ、3種のキモトリプシン型プロテアーゼ遺伝子がAdpAレギュロン構成員であることを証明し、その転写活性化様式を明らかにした。なお、キモトリプシンは菌体外酵素であるペプチドグリカン分解酵素成熟化のためのプロセシングに関わることを示した。 (4)A-ファクターの標的の1つである黄色色素の化学構造を決定し、グリキサゾンと命名した。また、いくつかの生合成酵素の反応機構を明らかにした。 (5)セリン/スレオキナーゼAfsKの自己リン酸化部位Thr-168およびAfsKによりリン酸化AfsRの部位をThr-41と決定した。AfsRはリン酸化によってDNA結合能が増大する。 (6)2種の放線菌S.ambofaciensおよびS.coelicolor A3(2)からカルモジュリン様のタンパク質CabBをコードする遺伝子をクローニングした。大腸菌で発現させたCabBはカルシウム結合能を示し、またカルシウム結合能によってα-ヘリックス含量が大幅に増加することを見出した。遺伝子破壊により、CabBは胞子の出芽に影響を与えることが判明した。
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