研究概要 |
生体リズムは、遺伝子振動が行動にまで発現する極めてユニークな系である。我々が単離した哺乳類の新しい時計遺伝子群(mPer1,mPer2,mPer3等)のリズム生成機構、情報伝達系を分子のレベルで明らかにするため以下の研究を以下のことを明らかにした。(1)時計遺伝子のネガティブフィードバック機構を補助し、その振幅を正の方向にも負の方向にも増大するという全く新しいタイプの時計転写因子PAR/E4BP4系を報告した(Genes Develop,2001)。これは、時計の安定化に寄与する多重フィードバックシステムの初めての例であり、時計の出力機構としても重要である。(2)mPer1プロモーター・luciferase遺伝子導入トランスジェニックマウスを作成し、生体内での時計遺伝子発現のリアルタイムモニター系(Nature 2001)、生体外での薬剤の時計遺伝子のリアルタイムアッセイ系を確立した(Nature 2001;Curr Biol,2001)。(3)rat-1線維芽細胞系を用いて、endothelin1(ET1)投与により、時計振動が起こることを示した。次に、時計遺伝子改変動物(今回はcryのさまざまな改変動物)から取った細胞を用いて、線維芽細胞にも視交叉上核と同様の時計のコアフィードバックループがあり、時を刻むことを証明した(Science,2001)。(4)時計の主要振動遺伝子であるPER2が、細胞質一核内をシャトルし、ユビキチン化して分解されるという、蛋白の動的な制御機構を初めて証明した。
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