研究課題/領域番号 |
13854011
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北 潔 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90134444)
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研究分担者 |
渡邊 洋一 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (90323568)
三芳 秀人 京都大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20190829)
原田 繁春 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (80156504)
網野 比佐子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10323601)
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キーワード | ミトコンドリア / 低酸素適応 / 回虫 / 呼吸鎖 / フマル酸還元酵素 / 複合体II / ロドキノン |
研究概要 |
われわれは回虫をモデル系として寄生虫における低酸素適応機構の研究を進め、ミトコンドリアのNADH-フマル酸還元系が宿主体内の嫌気的環境で中心的な役割を果している事を明らかにした。その生理的意義は嫌気的グルコース分解系の最終ステップとして、無酸素下でも複合体Iの共役部位を駆動する事によりATPを合成できる点にある。そこで本研究ではNADH-フマル酸還元系の分子構築とその生理機能の特徴を明らかにする目的で、回虫成虫ミトコンドリアおよび自由生活性線虫Caenorhabditis elegansを用い、研究を進めている。本年度は以下の3点についての成果を得た。 1.複合体I(NADH-ユビキノン還元酵素)について:昨年度の成果をふまえ、回虫成虫ミトコンドリアを用いて複合体Iのさらに詳細な酵素学的解析を行った。新規の複合体I阻害剤の中で特に作用の特異的なキナゾリン系化合物を用いた阻害機構の検討から回虫成虫複合体Iが低電位キノンであるロドキノンを特異的に認識している事が明らかになった。 2.複合体II(ロドキノール-フマル酸還元酵素;RQQFR)について:回虫成虫ミトコンドリアを用いてNADH-フマル酸還元活性の阻害剤をスクリーニングしたところ、極めて低濃度で阻害効果を示すアトペニンを見い出した。構成成分である複合体Iおよび複合体IIに対する阻害を調べた結果、アトペニンは複合体IIを特異的に阻害している事が判った。 3.低酸素適応機構について:回虫はその生活環において酸素分圧の大きく異なる環境に適応し、エネルギー代謝の恒常性を維持している。その制御機構を明らかにする目的でヒトなどで明らかになりつつあるHIF(hypoxia inducible factor)の関与を検討した。その結果、HIFの構成成分のひとつであるHIF-1βの存在を見い出し、実際にそのcDNAをクローニングする事ができた。そして、少なくとも成虫筋肉において発現している事が明らかになった。
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