関節リウマチ(RA)モデルに細胞増殖を抑制するサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CDKI)p16^<INK4a>とp21^<Cip1>関節内遺伝子治療を行い著効した。そこで、細胞周期制御療法の実用化にむけて研究を行った。1)CDKI療法の効果発現機序の詳細な解析:CDKIがCDK抑制依存的および非依存的に炎症や組織破壊にかかわる分子の発現を抑制することも見出し、その分子機構を明らかにした。2)関節炎治療用ウイルスベクターの開発:アデノウイルスベクターによる遺伝子治療における死亡事故をうけ、投与量や免疫原性を軽減するため、5型ウイルスのファイバー部分をDNA組換えにより35型ファイバーやRGD配列を含むものに改変することで、滑膜細胞への遺伝子導入効率を上昇させ、より少量のウイルス量で同等の治療効果を得られることができた。3)生物学的製剤によるCDKI療法の開発:ウイルスベクターによらずに細胞内にCDKI分子を直接導入するため、CDKI分子にHIV transmembrane domain(TAT)配列を加えた組替え蛋白を滑膜細胞内に導入する方法を開発し、発現、細胞増殖抑制機能を確認した。4)CDK阻害性低分子化合物の探索:低分子CDK4阻害剤のうち、免疫系を抑制することなくRA動物モデルの増殖性滑膜炎に治療効果を示す薬剤を探索し、その結果、2つの化合物について用法特許を申請した。5)滑膜細胞での選択的p16^<INK4a>誘導機序の解析:滑膜細胞においてp21を強制発現させるとp16が発現誘導され、その分子経路を検討した。蛍光ディファレンシャル・ディスプレー法やGeneChip法により得た候補遺伝子群から、p16^<INK4a>プロモーター活性を亢進させるものを絞り込むことにより、妊婦血清中に多く存在する蛋白一つが最終候補となった。
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