研究成果は目的に応じて、1.肝臓病における包括的発現遺伝子データベース作成、2.従来から知られている肝臓病の解析、3.新たな解析法、診断・治療法の開発、4.従来は肝臓病と考えられていなかった肝臓異常の検出、の4点に分類し以下に簡潔に記入した。 1.肝臓病における包括的発現遺伝子データベース作成 肝臓における包括的発現遺伝子情報と臨床情報をデータベース化した。世界最大となる正確で系統的な各種肝臓病のヒト肝臓における発現遺伝子データベースを構築した。 2.従来から知られている肝臓病の解析 解析情報を用いて慢性肝炎など従来から肝臓病として知られる疾患の研究を行った。B型およびC型慢性肝炎、自己免疫性肝炎および原発性胆汁性肝硬変、肝癌を解析し発現遺伝子情報を用いることによって包括的発現遺伝子情報からみた疾病の診断および病態解析だけでなく、従来の研究手法で解決できなかった重要な問題点を解決した。 3.新たな解析法、診断・治療法の開発 #1を用いることによってヒトにおいても染色体に臓器特異的な発現遺伝子の集積領域があること、これを用いることによって新規肝臓発現遺伝子の探索が可能であることを示した。病態解析だけでなく肝臓疾患の治療方針の決定にもgenomics技術が有用であることを示し、この業績によって平成16年度の産学官連携功労者文部科学大臣賞を受賞した。 4.従来は肝臓病と考えられなかった肝臓異常の検出 軽度の異常あるいは従来は正常と診断されていた肝臓の解析を行った。糖尿病および肥満を有する症例の肝臓における包括的発現遺伝子は対照群と大きくことなること、それらの異常が各種の代謝異常と密接に関連し、さらには全身の動脈硬化病変の進行にも密接に関係する可能性を示した。
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