研究概要 |
グレリンは最近我々のグループで、胃組織より単離した新規成長ホルモン(GH)分泌促進ペプチドである。グレリンはGH分泌促進以外にも、GHを介さない作用として摂食促進や血管拡張作用を有することが明らかになっている。 本研究では、グレリンの循環器疾患における機能解明の一環として、左冠状動脈結紮により作製した慢性心不全(CHF)ラットに於いて、グレリンの慢性投与(100μg/kg/day,3weeks,皮下)による左室(LV)不全の改善およびcardiac cachexiaの改善効果について検討した。また同時に対象(sham)ラットのついても検討した。 その結果、グレリン投与群は生食投与(plasebo)群に比べて、血中GHおよびIGF-1濃度がCHFおよびshamラットにおいて共に有意に高値を示した。plasebo群のCHFラットではshamラットに比較して体重増加の抑制が見られた。しかしグレリン投与のCHFラットでは、plasebo群に比較して有意な体重の増加が認められた(+10% vs +3%,P<0.05)。また、グレリン投与のCHFラットでは有意な心拍出量の増加(315±49 vs 266±31 ml/min/kg, P<0.05)および左室の収縮性の指標であるMax dP/dtの増加(5738±908 vs 4363±973 mmHg/s, P<0.05)も認められた。さらにCHFラットの非梗塞部の後壁厚を増加させ、左室径の拡大を抑制した。 上記のように、心不全モデルラットへのグレリンの慢性皮下投与は、左室不全およびcardiac cachexiaの改善、さらに左室リモデリングの抑制に有効であることが明らかとなった。
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