研究概要 |
オーファン受容体FM-3/GPR66(NMU1R)とFM-4/TGR-1(NMU2R)の内因性リガンドとして我々が同定したニューロメジンU(NMU)について、機能解析の一環としてNMU遺伝子欠損マウス(NMU-KO)の作製・解析を試みた。この結果、NMUは摂食抑制ホルモンであるレプチンとは異なる新しい作用機構で摂食抑制効果を発揮することが明らかになった。このNMU-KOマウスでは正常マウスに比べ、摂食リズムの消失と摂食量の増加が認められ、また明らかな運動量の減少が観察された。これに伴い高度の肥満、脂肪肝、糖尿病の発症などを呈し、生活習慣病のモデルともいえる表現型を示すことを明らかにした(Hanada et al. Nat.Med.10,1067-1073,2004)。 一方、オーファン受容体アッセイ系を用いた新規生理活性ペプチドの探索の一環として、NMU1RとNMU2Rの内因性リガンドのさらなる探索を進めた結果、ラット脳抽出物中にNMUより分子量が大きく疎水性の高い新たな内因性リガンドが存在することを見いだした。精製・構造決定した結果、本リガンドは36アミノ酸残基からなる新規ペプチドであることが判明した。また本ペプチドは、視交叉上核(Suprachiasmatic nucleus)で特異的に発現していることからニューロメジンS(NMS)と命名された(Mori et al. EMBO J. 24,325-335,2005)。NMSのN末部のアミノ酸配列は、既知のペプチドまたはタンパク質と相同性を示さなかったが、アミド化されたC末端7アミノ酸残基はNMUと完全に一致する構造であった。
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