研究概要 |
歯髄に存在する免疫細胞の役割を明らかにするために,マウス歯髄炎モデルを樹立すると共に,新鮮凍結非脱灰硬組織標本を用いた免疫組織染色技術を確立した.マウス大臼歯の切削および酸刺激により,歯髄炎を誘導し,歯髄における細胞動態を検討した.未刺激歯髄において,象牙芽細胞近傍にCD11c陽性細胞が存在しているが,刺激により数時間後に刺激部に近い象牙芽細胞周囲に多くのCD11c+細胞が集積することが明らかになった.これらの細胞は,形態学的に,また,CD205およびToll-like receptor 2/4発現から,樹状細胞であることが示され,象牙細管を介した象牙芽細胞の変化にまず最初に反応することが明らかになった.歯髄中央部には,未刺激状態においても,CD11b^+F4/80^+のマクロファージ様の細胞が存在しているが,この細胞は,CD11cを発現しておらず,刺激により刺激部近傍に集積してくるが,CD11c+樹状細胞に遅れて24時間をピークとして集まってくることが示された.この時期には,アポトーシスを起こした象牙芽細胞が多く認められ,その周囲にF4/80+細胞が存在していた.本研究から,歯髄に,樹状細胞とマクロファージの明らかに異なる免疫細胞が存在し,異なる役割を果たしている可能性がはじめて明らかにされた. 口腔癌および慢性炎症性口腔粘膜疾患である口腔扁平苔癬の角化細胞に発現誘導される抑制補助シグナル分子B7-H1の意義について検討した.癌細胞上の発現では,発現量の違いにより本分子が,正および負のレセプターを使い分け,抗腫瘍免疫応答に多様な関与を示すことを明らかにした.また,口腔粘膜疾患発症解析のために,ケラチノサイトプロモーター下にB7-H1を挿入したコンストラクトを作製し,トランスジェニックマウスを作製した.
|