研究課題/領域番号 |
13854030
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
梶谷 文彦 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (70029114)
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研究分担者 |
大江 透 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (70263556)
八木 直人 高輝度光科学研究センター, 主席研究員 (80133940)
菅 弘之 国立循環器病センター研究所, 所長 (90014117)
毛利 聡 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (00294413)
清水 壽一郎 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (80294403)
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キーワード | SPring-8 / 冠微小血管造影 / 心筋内灌流分布 / 分子トレーサー / アクチン・ミオシン / X線回折像解析 / 心筋線維配向 / マクロモレキュール |
研究概要 |
心筋灌流の空間的不均一性を心拍動による冠微小血管ダイナミクスと関連づけるため、SPring-8放射光ミクロアンジオグラフィとトレーサデジタルラジオグラフィの併用により、冠微小循環と灌流分布を評価した。ラット摘出ランゲンドルフ灌流心標本を用い、クレブス液もしくは赤血球懸濁液で灌流し、イオパミロン370で血管造影を、トリチウム標識デスメチルイミプラミンで灌流分布を測定した。クレブス灌流では赤血球懸濁液と比較し、冠血管径が明らかに太く、また心筋組織自体の造影も速やかであった。また、クレブス液灌流では赤血球懸濁液灌流時の5倍の分時灌流量が記録された。一方、灌流分布に関してはクレブス灌流時に比べ、赤血球懸濁液灌流時の方で分布の不均一性が高いことが明らかとなり、クレブス灌流時には冠動脈は拡張傾向にあり、赤血球懸濁液より酸素運搬脳が低いことによる代謝性拡張と灌流量増加に伴う剪断応力依存性の拡張によると考えられる。これらの要因による冠微小循環系のリクルートメントが、不均一性低下の原因ではないかと考えられる。 一方、心筋クロスブリッジ動態に関する研究では、ラット右室乳頭筋、摘出心、三次元培養心筋について実験を行った。ラット右心室乳頭筋標本を用いた実験では、筋節長とミオシン線維の格子間隔を測定し、〔筋節長×(ミオシン線維格子間隔)^2〕=一定という関係が得られた。さらに、ミオシン線維格子とミオシン・アクチン線維格子からのX線回折強度の比は発生張力と同様、筋節長と強い相関を示し、組織レベルから細胞内分子動態を観察しうることを示した。 心筋クロスブリッジ動態の観察について、ラット摘出ランゲンドルフ灌流心標本を用い、まず左心室自由壁からのX線回折像を、左心室自由壁局所の心筋線維の配向とX線赤道反射との関係から、左室自由壁局所のクロスブリッジ動態を明らかにする手法を開発し、左心室発生圧とX線回折像から求めたクロスブリッジ動態について貫壁性に解析を行った。その結果、収縮期には心外膜側および心内膜側でクロスブリッジ形成過程は左心室圧発生過程と大変良くマッチし、左室圧の発生に必要な局所間の同期が、貫壁性にも認められることを明らかにした。一方、弛緩過程については、心外膜側と心内膜側との同期性は認められず、クロスブリッジ解離量と心筋粘弾性の関係について今後検討を加える。また、組織工学的な観点から、三次元再構築したラット培養心筋細胞についてX線回折実験を行ったが、ほぼ等方性の散乱線のみが観察され、通常の心筋組織とは心筋六角格子構造自体が異なる可能性が示唆されており、最終年度で六角格子の発達過程についても検討を加える。
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