平成13年度の研究結果は以下の如く4つのテーマでまとめている。 「ベルリンの「東亜美術協会」にみる日本美術研究」・・ドイツ近代の日本美術研究に最も大きく寄与した「東亜美術協会」の活動は、日独の先学の研究のなかで看過されてきた。そのため、この協会の基礎資料となる「東洋誌」(1929〜1942)等を通して「東亜美術協会」の全体像を把握し、その上で近代ドイツにおける日本美術研究の進展に果たした「東亜美術協会」の役割および意義を考察した。これについて平成14年度別府大学紀要に投稿する予定である。 「雑誌『YAMATO』(1929〜1932)にみる日本美術研究」・・「ドイツ日本共同研究会」の雑誌であり、日本研究の研究機関誌に整えられた『YAMATO』は、近代ドイツでの日本美術の研究の進展を知る手がかりのひとつである。だがこの雑誌についても考察がまだなされていない。そこで『YAMATO』に掲載された日本美術関連の論文等を検討し、日本美術の研究に対する『YAMATO』の役割および意義について考察した。この検討は平成14年度別大大学院紀要に投稿準備中である。 「美術史家上野直昭と「日本研究所」について」・・美術史家上野直昭に関する未公刊の資料および関連公刊資料を入手した。そのため包括的な考察を行い、既往の指摘とは若干異なる当時のドイツ日本共同研究会の実状を明らかにした。これはすでに別府大学紀要第43号に投稿しており、4月には刊行される予定である。 「日英博覧会と伯林古美術展覧会における日本の古美術」・・「伯林日本古美術展」が前提にした1910年の「日英博覧会」での古美術展示に着目し、日本美術に対する見解を比較検討することで、ドイツ独自の日本美術観を明らかにし、その研究成果は昨年9月末に欧州日本資料学会において発表した。現在さらにその発表内容を投稿論文にまとめている。
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