平成14年度の研究結果は以下のかたちでまとめている。 「JAPANESE ART AT THE 1909 EXHIBITION OF FAR EASTERN ART IN MUNICH」・・1909年に大規模な日本を中心とした展覧会がミュンヒェンで開催された。従来この展覧会についてはその存在すら等閑に付され、全く関心をもたれていなかったが、時期的に早くにドイツで開催された展覧会であるため、この展覧会に着目し、その意義を考察した。今回は以前より探していた当時の関連新聞記事を入手し、それらを検討した上で、この展覧会の意義はパリ万博に次いでドイツでの日本美術観を一変させた点にあることを確認した。この展覧会に出品された作品群はドイツに所蔵されるものであり、その後のドイツでの日本美術蒐集の進展にも大きな意味を持つことも理解できた。この研究成果は、昨年9月に欧州日本資料学会(パリ・日本文化センター)において英語で口頭発表をおこなった。現在平成15年度別府大学大学院紀要に投稿する予定である。なおこのテーマは当初の予定以外に資料が入手できたことと、発表の機会に合わせて選択されたものである。 「ドイツの日本美術史學の進展とウィーン學派」・・ウィーン、ミュンヒェンで入手した資料を中心に、ドイツでの日本美術史研究がいかなる形で学術的に進展していったのかを検討した。その結果、ウィーン学派のひとりJ.シュトスゴフスキーが東洋美術史研究の基盤を形成し、その具体的な成果は日本美術史の研究に及ぶものであったことを確認した。またかれの弟子のK.ヴィートが日本の仏教彫刻の研究を進め、ドイツでの日本美術のなかでも彫刻への評価がはやくに確立されていることに少なからぬ意味を持つことも明らかになった。この成果は、学位論文の一部としてまとめている。 「ドイツにおける美術史家と日本美術史」・・このテーマで昨年度より関連資料を調査しているが、予定していたよりも資料が多く、まだ十分に入手できていない。1月に入り、新たな情報を得て、考察対象としていたO.キュンメルのもとで学位を取得した人物の存在を確認し得た。そのため聞き取り調査を行い、未発表の一次資料を入手し、改めて検討した上で、学位論文の一部としてまとめる予定である。
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