平成15年度は研究最終年度であり、申請時に記したように、これまでの研究と今年度の研究とを包括して「近代ドイツにおける日本美術受容研究」と題して学位諦文にほぼまとめることができたため(本論序論2章、第1篇6章、第2篇11章、第3篇4章、第4篇7章、結論から成る)、早稲田大学文学部に提出する予定である。3月末日に指導教授に概要を論文目次を添えて提出し、今年度中の審査開始の許可を得た。以上のように15年度は、これまでの研究成果を学位論文としてまとめるために、総括的に研究をすすめた。以下に、今年度において特に成果の出た研究についてテーマ毎に記す。 「美術史家キュンメルとミュンスターベルクの比較」・・平成14年度にキュンメルの資料を蒐集し、ドイツの日本美術史家の日本美術史の形成について検討したが、その後両者に関する資料をさらに見出すことができた。それらの資料を援用して新たに両者を比較検討することで、両者の独自の日本美術観を確認し得た。これは学位論文の一部としてまとめた。 「展覧会にみる日本美術観の変遷」・・1900年から1939年の間に日本の古美術が展示された展覧会を選択し、それらを通して日本美術の把握の変遷を検討した。考察対象となる展覧会の関連資料は日本とドイツで収集したが、その一部より日本ではほとんど知られていない1903年の日本美術展が紹介できた。この検討からさらに視野を日本美術史の形成の問題に向けて、具体的に作品の時代区分を通して考察した。これらは学位論文の一部としてまとめた。前者の考察を別府大学紀要に投稿する予定である。 「《嵯峨天皇御影》のドイツでの入手経緯」・・現在御物の《嵯峨天皇御影》作品が明治期にドイツで入手された経緯についてすでに論文で指摘したが、今年度の現地調査にて、新たに未公刊の一次史料を確認し得た。そして検討の結果、史料による新事実を加えて、従来支持されてきた内容とは異なる新たな入手経緯を提示し、改めて学位論文の一部にまとめた。またドイツの東洋美術協会への投稿を予定して投稿論文を作成している。
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