研究概要 |
平成13・14年度研究において、映像刺激によって喚起される不快情動の程度が、被験者の刺激希求度によって異なり、そうした不快情動体験を開示することが、情動事態の不快経験を緩和する可能性があることが明らかとなった。平成15年度研究では、評定法に基づく、不快体験の認知的側面に関する上記の知見が、不快体験時の被験者の生理学的反応と、どのような対応関係を示すのかについて、主に被験者の心拍数の変化と呼吸数の変化とを生理学的測度として用いることで検討した。 被験者を「刺激希求尺度」(木田ら,1993)の得点により。外的刺激希求度および内的刺激希求度の各々について高低の2群に分け、それらを組み合わせた4つの刺激希求タイプに分類した。各群の被験者に認知的恐怖を強く喚起することが認められる映像刺激を呈示し、その間の被験者の心拍数と呼吸数とをPowerLab System(バイオリサーチセンター:平成13年度助成によって備品購入)によって測定し、安静時の実験資料と比較した。 その結果、基本感情評定において、内的刺激希求度の高低に関わらず外的刺激希求度の高い被験者で、不快度が高く評価される傾向が認められた。さらに、特に恐怖喚起度の高い3つのシーンでの心拍数と呼吸数のそれぞれが、安静時の心拍数と呼吸数とからどのような変動を示すのかについて検討したところ、恐怖場面では、心拍数、呼吸数ともに安静時より減少し、この傾向には、外的刺激希求度の主効果が認められた(心拍数:p<.01;呼吸数:P<.05)。すなわち、外的刺激希求度の低い被験者に較べ、外的刺激希求度の高い被験者において、心拍数・呼吸数ともに安静時に較べ、有意に減少する傾向が見出された。 このことから、不快刺激に対する生体の内的な生理学的な反応は、被験者の外的刺激希求度と関連性が高い可能性が示唆された。
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