研究概要 |
本研究では,軽度発達障害の中でも特に注意機能にかかわる障害に焦点を当て,日本人児童生徒を対象に学級単位で集団実施が可能な注意機能検査バッテリーを作成し,その有効性を実証的に検討した. 開発にあたり,予備検査を実施した.この予備検査の結果に基づき,検査バッテリーを構成する下位検査を確定し,それぞれの下位検査について材料とマニュアルを完成させた.本検査の特徴として以下の3点を挙げることができる.第1に,注意が複数の異なる機能から構成されているとする認知心理学的枠組みに立脚し,4種の下位検査によって,選択的注意,持続的注意,反応抑制,注意分割という異なる注意機能をそれぞれに査定可能である.第2の特徴として,生態学的妥当性の指向を指摘できる.検査に対する被検児の興味をより喚起するために,UFOに乗っていじわる星人となかよし星人がやってくるという架空の物語を設定した.検査バッテリー内の各下位検査は,いじわる星人をやっつけ,なかよし星人を助けるという課題要求になっている.第3に,学校教育場面での利用を考慮し,学級単位で集団実施が可能な点が挙げられる.生徒を対象に本検査を施行し,学年の経過に伴う注意機能の発達的推移を明らかにした.このデータに基づき,各注意指標について学年ごとの標準化を試みた.この標準化資料によって,当該学年の平均得点との比較という観点から,4種の異なる注意機能のそれぞれについて被検児の発達の度合いをアセスメントすることが可能となった.さらに,被検児の日常の行勲をもっともよく知る立場にある学級担任を対象に,注意にかかわる問題点の評定を依頼し,その評定得点と注意機能検査との関係を検討した. 本研究の中で開発された検査は,児童・生徒を対象とした注意機能障害のスクリーニングのために今後有効に活用できることが期待される.医療(医学部附属病院および長野県立子ども病院)と教育(教育部)の連携の中で,この検査を用いた就学指導と援助サービスのための研究を現在継続して展開中である.
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