本研究は、発達上さまざまなリスクを抱える児童・青年に対する親族以外の年長者による発達支援の地域システムおよびプログラムを、メンタリングという方法を利用して構築するものである。当初、大人が地域において発達支援を必要とする子どもとマッチングさせるという計画であったが、調整が難航したため、大学生が児童養護施設に入所している子どもと1対1でメンタリングを行うという形態に変更した。変更したといえども、従来のメンタルフレンド事業とは異なり、大学の所在する地域の施設への学生の派遣という意味で地域システムであり、児童福祉関係者などからスーパーバイズを受けないという点でメンタリングを基礎においた実践的研究である。 1年目を終えて、すでに大学生が養護施設に定期的に通いはじめて半年以上になる。施設長の指導もあり、すべてのメンター(学生)がメンティーと1対1の対応を取れているわけではないが、1対1の対応が可能になるまでの経緯や子どもの変化、特にリスクの高い子どもの処遇をめぐる諸機関による連携会議への参加などを分析し、初期実践(6ケ月)として論文化した。当初3名のメンターが現在6名と増加しており、各自が提出する実践記録を今後も詳細に分析しながら、メンタリングのあり方およびその効果を明らかにしていくと同時に、このような取り組みが全国の児童養護施設で求められる実践であるのかどうか、また求められるとすればどのような形態が適切なのかについても、全国規模の調査を実施して明らかにしたい。
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