1.本年度の研究目的は、高齢者介護において社会資源を導入する際の、利用者と家族による情報収集の内容と編集過程を検討することにあった。このため、大学院生等が二人一組となり、栃木県宇都宮市近郊の伝統的城下町をフィールドとして聞き取り調査を行った。現時点では旧町部の7家族の聞き取りを終えている。これらはテープ起こしをした上で、グラウンディッドセオリーアプローチやナラティブアナリシスによって分析が進められている。 2.これらの分析からは、今後の研究をリードするいくつかの手がかりが得られている。まず第1に、介護に関する情報収集に関しては、新聞報道等マスメディアとともに、地域での語りが有力な資源となっている可能性かある。病院で会う同様の状況の人々、ケアマネージャー、近所の人々の語りを資源として、自らの介護の状況を理解し、あるいは日々を説明している様子が見出された。次にそれらの上位構造としてのマスターナラティブすなわち「愛情をもって家族が介護する」という物語の影響力が評価された。また、以前のなんらかの介護経験が、現在の介護を形作る可能性、いわぱ地域における介護態勢の経験・学習といった可能性も検討している。 3.このような利用者・家族の情報収集・編集をさぐる中で、地域の保健婦、ケアマネージャーの重要な役割か改めて確認された。そこで、家族への聞き取りを一時延期し、これら身近な専門家からみた、当該地域での高齢者介護の有り様について聞き取りを進めている。また、これら専門家を通してあらたに山間部の家族への聞き取りの準備を進めている。 4.これらの成果の一部は、日本心理学会(2001)、健康心理学会(2001)、日本発達心理学会(2002)、出稼ぎ・過疎・高齢者研究会(2002)で発表した。
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