自然エネルギー促進に関する新しい手法の基礎になりうる注目すべき動きとして、これまで営利企業や国策会社が中心だった風力発電ビジネスに新たに参入してきた、NPO主導による小口の市民出資をもととするコミュニティ・ビジネスをも志向する市民風車の建設運動が、地域コミュニティ再生の視角からも注目される。これらの活動とその効果は、地域住民の志を結集し、エネルギー政策の転換を求める「新しい公益」の実現、「新たな公共圏」の提起と意味づけられ、評価されていることが本研究によって明らかになった。 先鞭をつけたのはNPO法人北海道グリーンファンドであり、99年からスタートした「グリーン電力料金」をもとに、1口50万円の小口の出資をもとめ、オホーツク沿岸の浜頓別町に1000kWの発電用風車を建設し、2001年9月から運転を開始した。設置された地元でも学習会などが開かれ、具体的効果として、札幌市など都市部の住民との新たな交流の機会、環境教育の機会と評価されている。この動きは道内の他地域にもひろがり、また青森県鯵ヶ沢町にも、秋田市天王町にも、それぞれ新たに発足した地元NPOと北海道グリーンファンドが協力して、同様の市民出資方式によって2002年11月に1500kWの風力発電が建設された。このほか宮城県、千葉県、静岡県、鹿児島県などにも同様の動きがひろがっていることが資料収集や聴き取りでわかった。これらはデンマークやドイツでひろく見られる住民出資型の発電用風車建設運動に刺激されながらも、NPOを基礎とした日本的な展開であり、サスティナブル・ソサエティをめざす、すぐれて2000年代的な市民主導型の運動である。事業性と運動性・市民参加との新たな統合モデルとしても注目される。このような小口出資方式は、事業性を主軸とする、EUが導入を検討中のグリーン証書方式や日本で2003年4月からはじまるRPS方式の対極に位置すると評価できる。
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