研究課題/領域番号 |
13871025
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研究種目 |
萌芽的研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永田 信 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20164436)
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研究分担者 |
久保山 裕史 森林総合研究所, 東北支所, 研究員
山本 伸幸 島根大学, 生物資源科学部, 助手 (90284025)
立花 敏 , 財団法人・地球環境戦略機関, 研究員
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キーワード | 山村 / 自殺 / 出稼ぎ / 遺族 / 自殺予防 / 心のケア |
研究概要 |
統計資料を用いて山村の自殺率の高さの有意性及び関係する社会生活要因を検討し、自殺死亡率の高い秋田県における調査から事例山村での自殺の実態及び予防活動の現状を把握した。厚生省人口動態統計を基に全国の市町村別自殺標準化死亡比を算出し、市町村を振興山村指定別に分け、標準化死亡比の差の検定を行ったところ、全部山村、部分山村、指定なしの順に標準化死亡比が高く、平均には有意な差があった。人口動態統計から算出した平成11年都道府県別年齢調整自殺死亡率を被説明変数とし、27の社会生活指標と昭和50年都道府県別年齢調整自殺死亡率とを説明変数とした増減法による重固帰分析の緒界、男女共に出稼者比率と昭和50年年齢調整死亡率が有意な説明変数として選択された。このことから、約一世代前の自殺率の高さがその後の自殺率に影響を及ぼしている事や、出稼者となる男性だけでなく周囲の人にも何らかの自殺の危険困子が働くことがうかがえた。秋田県の事例山村における自殺の実態に関する聞き取り調査の結果、うつ状態にあったと考えられるケースや、家族との同居が多く見られた、過去に家族に自殺者がいた場合も目立った。出稼ぎとの関係では、通年の出稼ぎから帰ってきた人や、出稼ぎ者の母の例があった。借金を抱えた農家の例も見られた。家族に自殺者がいたケース、出稼ぎ者のケースは、統計的検討の結果を裏付けるものと言える。自殺予防には、このような人々を重点的な対象として、精神的な孤立を防ぐために地域との結びつきを強める活動が有効であると考えられる。特に、遺された人々の心のケアは緊急に必要な対策である。今後の研究課題は、より詳しい資料を用いた市区町村別の統討的分析と、秋田県以外の山村における実態調査から、山村における自殺の要因を明らかにし、対策を検討していくことである。
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