1.日本の農村部での非営利・協同事業の一形態として注目されてきた、農村女性による加工・直売事業について、それらの「非営利的な展開」が可能となる杜会的土壌をさぐることを目的に、事業主体である女性たちの、「非営利・協同」へのアクセスポイントとして、生活時間調査等における農村女性の「社会的活動」に着目し、そのあり方が、農村における「公共圏」の創出に寄与していることを論じた。〔非営利組織と市民社会の関係〕 2.同時に、そうした活動を取り巻く客観的な状況、とりわけ「経済のグローバリゼーション」下での、非営利・協同事業及び協同労働の「市場」における位置づけについて、検討を行った。具体的には、事業高が増加し、社会的需要が高まってきた時点での、組織のあり方、経営をめぐる姿勢の変化等について、事例研究に着手した。〔非営利組織と市場の関係〕 3.信州で活動するNPO法人を対象として、行政とのパートナーシップの現状とその課題を問うたアンケートを実施した。ただし、このアンケートは、長野のNPOセンター及び長野県生活環境課との協同作業とした。調査そのものをパートナーシップ事業として行いながら、その困難と課題を自らの身をもって捉えようとする試みである。さらに、市町村(行政側)に対しても、地域の非営利事業者との協働の現状を尋ねるべく、アンケート原案を作成し、現在、行政も交えて検討中である。〔非営利組織と地方行政の関係〕 以上三つの観点から、非営利事業と、その他の社会的諸主体との相互作用について、実証的な研究を進めてきているが、3については、まだ予備調査の段階にとどまり、本格的なデータ蓄積には至っていない。来年度の重点課題としたい。
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