日本国籍を持たないニューカマーの子どもの不就学の状況はきわめて深刻である。東海地方のある都市で実施した調査では、不就学の状態にある者が80-100人程度存在し、不就学率は小・中学校合わせて17-21%との推計値をえた。ブラジル人児童生徒の不就学の全国的推計では、実数で約3千人、率で約15-18%と試算された。これらはいずれも外国人登録者の場合であるが、未登録者の子どもの場合は、より深刻である。もちろん、その不就学の実態を正確に把握することは困難であるが、筆者の推計によると、少なくとも1万人程度は不就学の状況にあると考えられる。 義務教育段階において、このような不就学状況が現出する要因は種々考えられるが、その根源的要因は、義務教育の「正規の対象」を日本国籍保有者である「日本国民」に限定し、日本国籍を有しない外国人を「非正規者」として位置付ける公教育の法制度的枠組みに求めることができる。つまり、日本国籍を有しない子どもに対しても、日本人と「同一的に」就学の機会が「権利・義務」として提供されないかぎり、かれらの不就学は今後も必然的に生み出され続けることになる。「国民教育」にのみ依拠した公教育は、多国籍社会においては、「国民でない者」を排除することはあっても、かれらの教育を受ける権利を十全に保障しえないのである。不就学をもたらすこのような「国民教育」からの脱却が必要である。
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