今年度は、二点において研究を行った。第一に、江戸時代に銀遣い圏であった上方を中心とする地域における金銭相場について、検討を行った。特に本両替の動向と銭相場に関しては、博士号申請論文としてまとめた。これにより、本両替仲間内における金銭相場建ての概要と、各地の金銭相場が大坂本両替の建てる相場を基準としてそれに仕掛けを行う人為的な「通用相場」であること、各地の相場が次第に相似的になることを明らかにした。特に摂津池田および麻田藩領においては、具体的な貨幣流通について段階的に検討し、それにより金相場は銭相場より大坂の影響力が強いことを解明した。また京及び周辺地域の金銭相場についてデータを集め、大坂との連動性を明らかにした。 また第二に、銭相場金遣い圏である東日本については、自治体史などにより、各地の関連史料の所在調査と収集を行った。その内、名古屋・桑名・前橋・刈谷などにおいて日記類などから継続的なデータを収集し、時系列を作成した。次年度には、この内から現地での調査が必要となるが、江戸周辺の場合は江戸相場との連動性が強く、仕掛相場である可能性が高い。また日本海側の北陸においては銀遣いであるが、大坂との関係性については今後さらなるデータ収集と分析が必要である。 今後は、江戸と大坂の貨幣相場の関係について先行研究を批判的に検討するとともに、その連動性について考察していくとともに、金遣い圏と銀遣い圏にまたがる商取引における換算基準および現実にやりとりされる貨幣についてデータを収集し、分析する予定である。
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