正確には平成13年度末になるが、平成13年度の研究実績報告書を提出した後、ニューヨークのYIVO(ユダヤ学術研究所)に出かけ、ガリツィアのイディッシュ語ユダヤ人に関する史料の収集状況を調査した。YIVOは、東ヨーロッパを中心にナチスの破壊を免れたイディッシュ語の史料や文献、写真その他の収集活動を行い、世界で最大規模のコレクションをもつ研究所である。 その後、平成14年度の研究実施計画にもとづき、ウクライナのキエフで、ヴェルナツキ記念ウクライナ国立図書館を中心に史料調査を行った。昨年度のリヴィウでの史料調査で、リヴィウのユダヤ人関係史料の一部は第二次世界大戦後キエフに移管されたことが明らかになったため、キエフでの調査の第1目的はリヴィウの史料の追跡であったが、現在、残念ながら史料は行方不明になっていることが判明した。調査にさいしては、ウクライナ国立文書館の副所長ゲンナディ・ボリャーク氏、ヴェルナツキ記念図書館の副館長ルドミラ・ムファ女史およびユダイカ部門の責任者イリナ・セルゲイェヴァ女史の世話になった。またこの調査を通じて、現在のウクライナでのユダヤ人に関する歴史的研究の現状についても知ることができた。 昨年度のリヴィウおよび今年度のキエフでの史料調査で得られた知見については、立命館大学国際文化研究所主催の連続講座「東欧世界は20世紀どう生きたか」の「マイノリティと記憶」をテーマとする講座で報告する機会をえた。この報告は、同研究所発行の『言語文化研究』に発表される予定である。 なお、この萌芽研究の研究成果の発表にさいしては通称「野村真理」を使用している.
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