本年度は校正データの入力をすべて完了し、校本を「新編彙音妙悟」(樋口靖編、東京外国語大学外国語学部刊、平成16年3月)と題して公刊した。また、日本中国学会年次大会(平成15年10月4日、於筑波大学)において「増補彙音妙悟の増補字」と題して研究成果の一部を発表した。 「彙音妙悟」はこのたびの作業によって99%は正しく読めるようになり、その結果、これをを基礎として泉州方言の比較的古い音韻体系、語彙の研究を着実に進展させることができるようになったと信じている。具体的な成果としては主に以下の4点である。 1)増補字の実態がはっきり分かつた。 2)「土、土解、俗、俗解、正」等々の注記の範囲を確定することができた。 3)「平、上、去、入」四声の範囲を確定することができた。 4)字形、意味が不明であった俗字、方言字、僻字についてもある程度解決することができた。 主な反省点としては以下の3点である。 1)データはすべてPDFファィルにしてあるので、WEBで公開し専門研究者に提供するつもりであるが、インターネット関連の技術的整備が間に合わず、まだ実現していない。但し、近日中に完成の予定である。 2)計画では、「四角号碼」による一字索引を付録するつもりであったが、作業が複雑で困難を極め、完成を見なかった。「四角号碼」索引の作成にはどうしても専門家の援助を得る必要があることが分ったのでこれは他日正式出版に際して整備することとした。 4)校文は分量が多いので今回の「新編」に付することは見合わせざる得なかった。これも2)と同じく他日を期したい。
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