三年計画の最終年度となる本年度はこれまでの様々な研究が結実した年であった。 まずこれまでのビデオやオーディオによる録画・録音データが揃ってきたところで、それらをポルトガル語、英語、日本語のネイティブスピーカーの助けを借りながら詳細にテープ起こしをし、談話分析を試みることができた。その中で少数民族の子供の母語が他の子供にとって大きい言語資源となっていることが明らかになってきた。これはピア(学友)刺激が第二・第三言語使用の触媒となって働いていることを意味している。例えば一つのエピソードとして、ポルトガル語がその日の教育・学習言語となっている場面において、ポルトガル語を母語とする児童が他の児童の発言のモデルとなったり、きっかけを作ったり、足場となって発言を助けたりしている事実が分かった。このことについてはイギリス、リード大学での第36回BAAL学会で発表し、大東文化大学紀要42号に論文発表することができた。 またブラジルやアメリカからテキストや教材を多数取り寄せICS(インターナショナル・コミュニティー・スクール)の児童に取り組ませるなかで、多言語リテラシーがどの様に育まれて行くかという過程を観察した。その中で「地球プロジェクト」が考案され、地球をモチーフにした三ヶ国語読み書き学習モデルを提案した。これについては今年のJAPC誌に論文が掲載される。 その他、ICS敷地内に外国語子供図書館を設置し外国語の絵本を収集する傍ら、「インターナショナル紙芝居」のボランティア活動も続けて行った。子供達にもコンピューターを用いてオリジナル英語小話のスライドを作成させ、プレゼンテーション活動を行わせた。その成果についてはJALT CALL学会で発表した。
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