本年度は、ヒトゲノム計画の進展により格段に進歩を遂げつつある遺伝子治療や遺伝子診断における研究開発の現状とそれらの研究成果の特許保護を行う際の課題についての調査を行った。具体的には、国内の大学の医学部を訪問し、多くの研究者に直接面談し、遺伝子治療や遺伝子診断における研究開発の現状について、研究室の見学を含め、調査を行うとともに、研究成果の特許保護についての医療関係の研究者の意識について意見交換を行った。その結果、医療分野の研究成果については、研究成果の公共性、生命の維持の要請等の観点から、他分野の研究成果と同様に保護することについては問題があるものの、研究開発に多額の費用を要することや研究成果についての国際的競争力の観点から、何らかの保護を行うことも必要であるとの見解が得られた。また、諸外国の特許法における医療分野の発明の保護について、法令や判例についての調査を行い、特に、医療分野の発明について、効力除外規定を設けている米国に出張し、大学関係者や法律の実務家に対する調査を行った。米国においても、研究者や実務者の意見はおおむねわが国の研究者と同様であった。これらの調査結果を踏まえ、研究代表者と研究分担者で調査結果の分析を行い、医療分野の研究成果の国際的保護のあり方について等、来年度の研究に向けての論点整理を行った。
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