研究課題
萌芽的研究
本研究は、戦前期日本の国制を帝国として総合的に把握し直して日本本国と植民地そして外郭としてのアジアとがいかなる連関をもって成立していたか、を明らかにすること最終的な課題とし、その分析のために戦前期の東亜研究所・南洋協会・回教圏研究所・太平洋協会・民族研究所などの対アジア調査機関群の調査活動とその成果を分析し、それが実際の外交・経済政策やアジア認識にいかなる影響を与えたのかの解明しようとするものである。しかし、これらの調査機関については、現在ではそれらがいかなる調査を行い、いかなる成果を挙げたかについて、ほとんど忘れ去られたまま埋もれており、その活動自体に不明な点が多い。そのため、この萌芽的研究においては、まず戦前期に最大の調査範囲をカヴァーした東亜研究所の活動に焦点を絞って、同所が蒐集したアジア全域についての情報を分析することを優先課題とし、併せてその他の研究所について検討する方法を採ることとした。今年度はその目的に沿って、山口大学・大分大学・大阪市立大学などにおける旧高等商業学校の旧蔵書や国立国会図書館、東京大学東洋文化研究所などの所蔵文書について調査を行い、そのリストを作製した。また、蒐集した史料に基づいて、中央アジアや東南アジアにおける経済・社会・宗教がいかに捉えられていたかについての経過報告と討議を行い、日本とアジアの諸地域との経済システムについての関連が民族観や文化理解といかに係わっていたの解明を進めた。ただ、東亜研究所の刊行物の全貌を明らかにできなかったため、次年度も旧高等商業学校の旧蔵書を中心に史料調査を行い、完全な刊行物リストの作製を期したい。
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