本研究では、道県政令指定都市、市を具体的な対象として財政、財務、そして意思決定等の行動様式を実証的に分析した上で、計画、執行、評価サイクルを通した統制の問題に対する研究の視点と地方自治体へ実践的に応用する手法を検討する萌芽的研究である。 研究活動初年度である平成13年度では、地方自治体の財務と予算編成の検証並びに政策評価の制度設計と実施に参画することで、計画、執行、評価の関係を一体化する独立行政法人制度が地方自治体に如何に応用可能かの基礎的検討を行った。とくに、エイジェント理論や取引コスト理論等を地方自治体内部の予算形成や評価に組み込む際の実践的問題点を検討した。具体的には、北海道ニセコ町をはじめとした地方財務への企業会計的手法導入による財務情報の質的問題の検討、北海道庁、岩手県、北海道北見市、江別市の評価と契約システム導入に対する実証的分析を行った。 研究活動二年度目である平成14年度は、上記各地方自治体における実証的分析を継続すると同時に国の特殊法人の独法化に伴う独立行政法人通則法並びに同会計基準の見直し、先行独立行政法人の単年度業務評価等に参画する中で、財務会計、政策評価に加え組織評価の地方自治体への応用を視野に入れた検討を行った。平成13年度の地方自治体に加え、政令指定都市である神奈川県横浜市も具体的な実証分析の対象に加えて研究を展開した。 その結果、第一に現行の財政法や会計法体系で形成される予算・決算情報に加え、政策評価のための財務情報たるライフサイクルコスト、機会費用等の形成と政策意思決定、評価への組み込みが必要であり、予算編成や地方自治体の議会審議への反映を如何に制度化するかが重要であること、第二に政策評価を最終的に意義のある制度とするためには、政策評価結果を予算編成や組織編成に反映できる財政システムが不可欠であること、第三に能率性評価、有効性評価、有用性評価の各段階における目標と責任の明確化を実現するため、とくに有効性評価における目標値の限界性、充足性、期待性を明らかにし評価に対する客観性担保と共に規範性担保を強化する必要があること、第四に関与団体、公営企業等への評価では事務事業評価の他に組織スラック等に対する評価を行うことが必要であること、第五に、独立行政法人制度のガバナンスを高めるため評価プロセスと中期計画に関する実証的な比較分析を進める必要があること等が課題として抽出された。以上を踏まえ、地方自治体の財務、政策に関するガバナンスと公共サービス編成の今後の研究に反映させたい。
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