本年度は昨年度の日本における組織不正行為、不祥事の事例研究を引き続き行うとともに、外国における事例(特にアメリカにおける)組織不正行為とその実態のインタヴュー調査を実施した。2002年は年初より、エンロン、ワールドコムの不正経理事件を契機に会計制度や監査制度のあり方、さらにはコンサルテーション業務や証券アナリストのあり方などについても踏み込んだ討論が行われ法的、制度的改革も一部行われつつある。そうした背景の中で、本研究の意味も大きいものがあり、また引き続きその後の実施状況などについても追跡調査が必要となってきている。また日本においても雪印食品、日本ハム等の偽装事件が発覚し大きな社会問題になるとともに、8月には東京電力の原子力発電所虚偽報告事件などが起き、いくつかのケースは内部調査もふくめた研究を進めることができた。具体的な研究の課程と成果物の状況について述べると、6月には本研究の中間報告の意味もふくめて『ピジネスの倫理学』(丸善)を出版することができた。さらに8月には渡米しいくつかの研究機関を訪問してインタヴュー調査を行うとともに、秋には日本国内においても2〜3のインタヴュー調査を実施した。その結果、不正行為を防ぐための制度的な緻密さとともに日米を問わず企業倫理教育の不十分さや意識改革が早急の課題であることなどが明らかになった。そうした状況をうけて企業倫理学、(Business Ethics)の分野での研究が、理論、実践、制度の各側面において非常に活発化してきており、日本における研究の活性化が望まれる。幸い、私自身は2003年度より慶慮義塾大学商学部で企業倫理論担当の専任教員となりこの分野をより専心研究することができるようになった。来年度は3年間の集大成としてのまとめと今後の研究の基礎を探っていきたいと考えている。
|