研究概要 |
現代の監査理論ならびに監査実務は,監査を取り巻く環境の変化に伴って,極めて困難な問題に直面している。その一つが,被監査企業による不祥事問題であり,他は,いわゆる継続企業問題である。これらの問題は,一般に,監査主体と監査報告書利用者との間に存在する,「期待ギャップ」に関連づけて議論されているように思われる。しかしながら,これらの問題は,実際には,単に監査を取り巻く環境変化によって生じたものと考えられるべきではない。むしろそれは,監査の本質的な機能や役割とも密接にかかわる重大な問題である。こうした問題の本質を明らかにし,それらに対して有効な解決策を提示するためには,監査のフレームワークについての再検討が必要となる。 本研究においては,こうした問題意識の下で,まず,上述の二つの事象,すなわち企業の不祥事ならびに継続企業問題の本質についての検討を行っている。その結果として,これらの問題に対応するためには,監査のフレームワーク自体を再構築するとともに,監査手続の概念にも根本的な再検討を加える必要性があるのではないかとの結論を得るに到った。すなわち,監査を単に個別の手続の集合体として捉えるのではなく,むしろ監査プロセス全体の枠組みを強く意識した上で,個々のプロセスを位置づけるというアプローチの必要性を明らかにすることができたと考えている。
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