研究概要 |
我々が1994年に提唱した無限次元微分Galois理論に刺激されて,B.Malgrangeもまた彼の無限次元微分Galois理論を提案した.我々の理論が代数性を前面に出しているのに対して,彼の理論は、Fuchs型の線型常微分方程式のGalois群に関する次の事実の非線型類似を追求したものである. 定理 射影直線上の階数nのFuchs型の線型方程式を考える.この微分方程式のGalois群はモノドロミー群の一般線型群GL_nにおけるZariski位相に関する閉包に一致する. これら二つの無限次元微分Galois理論の関係は必ずしも明らかではなかった. よく知られたようにR.Fuchsの方法により線型方程式のモノドロミー保存変形からPainleve方程式を導くことができる.この際に生じる1階非線型代数微分方程式の無限次元Galois群を,昨年度から今年度にかけて計算してきた.この結果を見てMalgrangeは彼の理論でも幾何学的な考察から同じ結論に達することを示した.つまりどちらのGalois理論で計算してもこの例においてはGalois群が一致する. この具体的な例を通して、何故二つの無限次元微分Galois群が一致するのかを研究した.その結果二つの理論の関係を完全な形で理解しつつある.
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