研究概要 |
1.ギーラーとマインハルトによって提唱された活性因子・抑制因子型の反応拡散系について,定常解の安定性を調べた.二つの同心球面に囲まれた領域において,抑制因子の拡散係数が無限大になった極限系の定常解のうち,境界上の一点でのみ極大となるものはいずれも適当な条件のもとで安定であることを証明した.また,そのような安定定常解が安定性を失うとき,周期解が出現することも確かめた. 2.三つの相が3重結合を持つ界面によって隔てられている場合について,その定常状態が安定であるための基準を明らかにした.これは界面が領域の境界と接する点の曲率によって表現されるが,特にある量の符号が決定的な役割を果たしていることが明らかになった.これにより,定常解の不安定次元を完全に決定することができる.また,数値シミュレーションによって,安定な場合と不安定な場合の動的な振る舞いの違いを調べた 3.あるネットワーク状の細い2次元領域がグラフ状の領域に退化していく様子を解析した.特に,細い領域が接するところの様子によっていくつかの場合があり,それによって極限方程式における接合条件が変わることをを明らかにした. 4,shadow systemと呼ばれる非局所項を含む方程式に対し,高次元領域における定常解の安定性について調べた.その結果,対応する単独の方程式に対する2番目の固有値の符号が安定性と深く関わっていることを明らかにした. 5.時間的に周期的な外力項を含む反応拡散方程式では系の周期よりも長い周期の解(これを劣調和解という)の存在について調べ,空間依存の反応項を仮定すると,どんな領域であっても与えられた周期を持つ劣調和解が存在し得ることを示した.
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