研究概要 |
本年度はまず第一に,相互作用をもつブラウン粒子系について温度パラメータを0に近づける低温極限の問題を考察した.このような極限操作の下で粒子系は微視的には堅牢な格子結晶構造を形成することが証明され,その上で,そのような結晶構造の巨視的な運動を特徴付ける回転と平行移動成分のランダムな動きを完全に決定することができた.この問題は,相共存と相分離の下で現れる,いわゆるWulff図形の運動を数学的に厳密な意味で研究しようという最初の試みであり,特に温度が0という単純な状況の下で考察したものである. 第二に,昨年度行った研究と関連し,それを発展させて,高さ0の近くで弱い自己ポテンシャルをもつような界面モデルのGibbs分布に対する大偏差原理を考察した.速度汎関数として総表面張力にプラスして,自己ポテンシャルの効果により界面が負の側にあれば優位性をもつことを表す項が現れることを示した.その応用として大数の法則が得られ,極限は自由境界を含む変分原理によって記述されることを証明した.1次元のデルタ・ピンニングをもつGibbs分布についても調べ,巨視的界面がちょうど高さ0になればエネルギーが下がることが,大偏差原理の速度汎関数を求めることにより示された. なお7月17日〜26日の期間,神奈川県湘南国際村センターにおいて国際研究集会「大規模相互作用系の確率解析」を開催しG.Papanicolaou教授(Stanford大)を招聘した.同集会では活発な議論が行われ大きな成果が得られた.
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