研究概要 |
本年度は,離散準凸関数の理論的な側面について研究を行った.連続最適化における準凸関数は,凸関数の満たすべき条件を緩めることによって得られる概念であり,凸関数のクラスに比べてより広い関数のクラスを構成する.一方,「離散凸関数」として,これまでに様々な関数のクラスが提案されてきた.したがって,離散準凸関数も,既存の離散凸関数の定義を緩めることにより定義されるのが自然である.しかしながら,単純に離散凸関数の定義を緩めただけでは,離散準凸関数として相応しい概念が得られるとは限らない.連続最適化における凸関数と準凸関数という概念の本質的な違いを見極めた上で,適切なやり方で離散凸関数の定義を緩めて離散準凸関数を定義する必要がある.このため,準凸関数に対する既存の研究結果に対する調査を数多く行った.また,既存の離散凸関数のクラスの中には,それ自身が「離散凸関数」としては不十分な性質しか持ち合わせていない関数も存在する.このような関数に対して,その離散準凸関数版を考えることは適切でないと思われる.この点を踏まえ,本研究では既存の離散凸関数のもつ性質について詳しく調べ,どの関数が「離散凸関数」として相応しい概念かを見極めた.その結果,近年室田により提案されたM凸関数という概念が,離散凸関数として相応しい性質をもつことが分かり,この概念を拡張することにより,離散準凸関数のクラスである,「準M凸関数」という概念を提案した.また,準M凸関数のもつ性質についても調査を行い,実際に離散準凸関数として相応しい性質をもつことを示した.さらに,準M凸関数に対する最小化アルゴリズムについても研究を行い,幾つかの効率的なアルゴリズムを提案した.
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