研究概要 |
本年度も前年度に引き続き、精度保証付き数値計算の応用と、数学解析の理論的考察に対する記号処理的接近の可能性について検討した。新たな計算機援用解析学構築の可能性を探るための検討を行った。即ち、偏微分方程式の解の存在に対する数値的検証において、その検証方式を従来の区間演算を用いて解く方法から、無限次元の意味でのノルム評価を用いる方式に変更して、検証の効率化を図った。また、このことによる解の存在検証における記号処理の活用方法への影響について考察し、将来の解の自動検証に向けての知見を得ることができた。 具体的には、代表者(中尾)は、分担者渡部と協力して、下記の問題に関して、数値的検証(精度保証付き数値計算)の実現と数式処理技法の融合性について検討した。また、9月には中尾、渡部がドイツのミュンヘンで行われた精度保証関連の国際研究会に出席、講演し、関連研究者との討論を深めた。 (1)非線形楕円型方程式の線形化逆作用素のノルム評価技法を、従来の検証方式の応用として実現し、それにもとづく検証の実例を与えその有効性を考察した。 (2)1次元特異摂動問題の解に対する効率的な数値検証法を実現するとともに、その楕円型問題への拡張について検討した。 (3)Navier-Stokes方程式と熱方程式に支配される熱対流問題の解の存在検証における数式処理技法の活用するとともにその実際的効用の評価を行った。 また、分担者の吉川は、以下の知見を得た。 (1)解析学の特徴の超限的手法の背後にあるアルゴリズム構造の例証発掘の過程の一つとして、準線形保存則の初期値問題のエントロピー解の計算可能性構造の検証を行った.また,この話題につき,内外の研究者と討議して,知見を深化させることができた. (2)数式処理ソフトMapleを用いて双曲型保存系のエントロピー解構成システムを実現した。
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