研究概要 |
有機溶媒PMMA(ポリメタクリル酸メチル)に閉じ込める前段階として,筒状有機分子シクロデキストリンにアントラセン,ピレン,SnI_4及びSnBr_4を挿入して,単一孤立分子状態を作り出した.これらについては粉末状態の試料を両面テープを用いて圧着し,それらからの反射スペクトルを測定した.これらのデータをクベルカームンク解析して,吸収スペクトルを求めることができた. 単一孤立アントラセン及びピレンの一部については,重要な結果が得られたので,現在投稿のための原稿作成に取り掛かっている.これらの試料及び他のフルオレン,SnI_4及びSnBr_4等についても,次の段階として,当初の目的である二重閉じ込めの状態を作るために,KBr中に拡散混入して圧縮した試料の作成及び有機溶媒PMMA中に拡散分散させて膜状に固定した試料の作成に取り掛かる.これらの試料は濃度調整が難しいが,測定条件を満たす良い試料が出来れば,直接に吸収測定が出来て,粉末のようなクベルカームンク解析は必要なく,スペクトルに現れる吸収帯の相対強度も信頼性が高いデータが得られ,電子準位の同定に耐えるものと期待される.またこのようにして固定した試料は,クライオスタット(冷凍装置)に取り付けて,低温(9K)の測定も可能である.低温の測定データは熱雑音(フォノンの影響)の無いものが得られ,理論と比較検討するのに重要なものである.
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