研究概要 |
解析的手法は自明ではないため折り畳む高分子鎖を格子モデルでモデル化しそのモンテカルロシミュレーションを行った。モンテカルロ法には今日の計算機の能力に見合うだけの数の乱数を高い品質で高遠に発生させることのできる乱数第生アルゴリズムが必要であるが、これには松本,西村によるMersenne Twisterが適切であることがわかった。また、格子上の高分子鎖を自己排除条件を課した状態でシミュレートすると極めて緩和が遅くなり計算できなくなる問題があるが、これを解決するために千見寺らによるMulti-Self-Overlap Ensemble法を用いた。また拡張モンテカルロ法の一種のマルチカノニカル法が有用であることがわかった。いくつかのモデル高分子鎖をこのようにシミュレートしその熱力学的性質を調べたが、タンパク質に見られるように温度の低下によってほどけた状態と一意的な折り畳んだ状態の間で2状態的に遷移する配列を残念ながら作成できなかった。モンテカルロ法をうまく実施できるようにするのに手間取ったため未実施のアイデアが残っておりこれらを順次試していく予定である。 また物性研究所のスーパーコンピュータSR8000に対する第一原理計算プログラムパッケージTAPPを元にしたプログラムの開発もあわせて行った。まずコードの最適化と未利用の系の対称性の活用で計算を高速化した。加えて金属表面上での有機分子の自己組織化のような関連研究も考慮して、フェルミ面のある系の計算の収束をフェルミェネルギーでの状態密度から系の誘電応答を計算して補正を行うことで加遠する手法を開発した。このプログラムは銅(100)面上の窒素原子の系に適用され窒素原ア問の有効相互作用を得るのド大変有用であった。
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