本研究は、45Tesla級の超強磁場中、0.5Kelvinクラスの定温下で、従来のBeCuだけを用いた高圧セルより高い静水圧力を発生し、かつ回転することのできるピストンシリンダー型のミニ高圧セルを開発することを目標とした。目標の外径、全長は米国Tallahasseeでの強磁場施設での適合性を考えて12mmφ、39mmとした。目標圧力は4GPaとした。回転などを考えるとき圧力よりまず、サイズが重要であった。次に高圧力を目指して、2重円筒方式を採用し、内筒にはNiCrAl、外筒にはBeCuを用いた。NiCrAlは物質材料機構の松本武彦氏から鍛造品の提供を受け、熱処理を試行しながら行った。熱処理温度は最初は真空中700℃であったが、その後のテストで720℃、2時間、炉冷がよりよい硬化処理と判明した。この2重円筒がどの圧力から変形を開始するかを調べるために、内径ゲージによるサブミクロン精度での膨らみのチェックを行い、3GPaで一部の内径の膨張を検出した。また、従来のBeCuの圧力セルでは問題にならなかった常温での加圧中に媒体が固化する問題が生じ、従来から村田惠三が開発してきたDaphne7373の固化圧力の測定が必要になり、2GPaを少し超える圧力から固化が開始することがストレインゲージを用いた測定で判明した。 これらの成果を第5版、実験化学講座7(丸善)に記述した。さらに高圧ハンドブック(丸善)、Jpn.J.Appl.Phys.に報告、記述する予定である。 [報告] 1.村田惠三、"有機伝導体での圧力制御法" 物性研短期研究会、「圧力誘起量子相転移」2004年2月5日、6日。
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