平成13年度は、中性子非弾性散乱による低エネルギー原子振動(ボゾンピーク)の観察および中性子小・広角散乱による中・長距離揺らぎの観測のための装置作製を行った。 英国ラザフォードアップルトン研究所および高エネルギー加速器研究機構に設置された中性子非弾性散乱装置により行った。これにより、バルクアモルファス合金の超塑性変形の前後において、わずかではあるが低エネルギー原子振動に差が観測された。低エネルギー原子振動は、ガラス物質において普遍的に観測されており、ガラス内部のナノメータ・オーダーの中距離揺らぎ・構造に由来すると考えられている。シリカガラスにおいては、密度増加率が10%程度になるような圧縮を行うことで、中距離構造に変化が生じ、低エネルギー原子振動の変化が顕著である。バルクアモルファス合金の超塑性変形には低エネルギー原子振動に顕著な差が観測されなかったことから、超塑性変形挙動においては、ガラスにおける中距離揺らぎ、つまりナノ構造は保存されることを示唆しており、超塑性変形挙動における原子構造の変化を明らかにする上で、重要な結果が得られたと考えている。今後も試料作製条件を変えながら、低エネルギー原子振動の変化を観測するとともに、中性子小・広角散乱による中・長距離揺らぎの観測を行うことで、超塑性変形挙動における原子配列構造について明らかにしていく予定である。
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