研究概要 |
本研究では雷撃電流に伴う強力な磁場により,周囲の大地が残留磁化を獲得する現象を対象としている.本年度は,岩石磁気学の手法を用いて,雷撃電流による大地の帯磁現象と電流伝播を研究するための実験法の改良を主に行った. (1)磁化特性の研究は,残留磁化,IRM(電磁石による人工残留磁化)、帯磁率、磁気ヒステリシス、熱消磁の実験からなる.これらの実験装置と手法を研究目的に合うように改良した.磁気ヒステリシス測定の自動化のため,パーソナルコンピュータを導入した. (2)雷撃電流に伴う残留磁化は2つの機構が考えられる.電磁石の磁場で磁性体が獲得する様な等温残留磁化と,雷撃電流が落雷地点を加熱して生じる熱起源の熱残留磁化である. 夏季に落雷が多い栃木県の氏家地域で,落雷を受けた田圃が発見された.同地域の収穫後に許可を頂いて,雷撃点を中心とする10m四方の範囲で調査を行った.磁気探査と地中レーダ探査を行った結果,明確な異常は認められなかった.しかし,雷が田圃の土手に落ちた後で近傍のU字溝へ移った地域では,雷撃点と欠けたU字溝周辺で強い磁場が認められた. (3)落雷を受けた田圃の雷撃点など4ブロック(1m四方)で,土壌試料を深度30cmまでに3面の平面を作って計600個の1インチ立方試料として採集した.また落雷を受けた田圃土手とU字溝周辺でも.地中30cmの3平面で200試料を採集した. これらの磁化測定と実験を開始しており,田圃土手では落雷地点を中心とする環状の磁化方位の分布が予察的に得られている.これは,非熱起源の磁化機構を示すと考えられる.
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