研究概要 |
本研究は,雷現象を今までの概念と異なり大地から調べる手法を開発することを大きな目標としている.特に雷撃電流の作る強力な磁場により周囲大地等が帯磁する(残留磁化を獲得する)現象を対象とする. 昨年度に続き,雷撃誘導磁化の実験のための装置と方法の改良を行った. 野外調査では,栃木県氏家町の落雷地点(田圃)において,フラッシュ現象によると見なせる土壌の磁化分布を認めた.水田の水と土壌の境界辺りの比較的浅部を雷撃電流が伝播したと思われ,この結果は酒井ほか(2000)で示した落雷地点の周囲10mを伝播した電流の軌跡の結果と良く似ていた. 研究では,残留磁化から雷撃電流の極性と電流値を求めることもテーマとしている.雷の化石となった磁化から,過去の雷撃電流を探ることができれば,雷被害などの分野でも需要が大きい.室内実験でIG(インパルスジェネレーター)による雷撃のモデル電流を用いて研究を進め,パルス電流が周囲に及ぼす磁場影響を数値化できる予察的モデルの構築に成功した段階にある. 富山県・岐阜県の県境で地電位差の連続観測を行っている.人工ノイズが殆ど無い同地域の観測データには,15km以上離れた直流電車の漏洩電流の影響も認められるが,落雷の影響も顕著である.落雷頻度・分布と誘導される地電位差を比較した結果,大地の電磁気物性(断層)の影響が認められた.また落雷頻度分布に地域特性があり,これは次の課題となってきた.
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