研究概要 |
本年度は,これまで我々が開発してきた火星大気二次元対流数値シミュレーションコードを用いて,本研究が目標とする数値計算の実行可能性を検討するべく予備的数値実験を行った.放射に駆動される鉛直対流を表現するためには100m程度の空間分解能が必要となる.一方,この鉛直対流を起源とする重力波が上方伝搬し砕波に至るまでを表現するためには十分な高度領域と分解能を確保しなければならない.分解能の確保と高度領域の確保とをどのように両立させれば良いかは利用できる計算機の性能に依存している. いくつかの数値実験の結果,高度50kmまでは100m程度の空間分解能のまま計算領域を単純に延長することにより,鉛直対流とそれによって励起される重力波の計算が可能であることを確認した.計算された重力波の水平波長は15〜20km程度,鉛直波長は10km程度,温位振幅は高度40km付近で10K前後となった.計算結果から波による鉛直熱輸送を計算し,これを温位勾配にともなう拡散によってなされたものとして鉛直渦拡散係数を見積もると,その値は鉛直1次元光化学モデルにおいて用いられている渦拡散係数と同程度の値であることがわかった. 京都大学大型計算機センターのスーパーコンピュータ(富士通VPP800)を用いて上記の計算を1モデル日実行するのに必要なCPU時間は約8時間である.これより本研究が目標とする高度100kmまで計算領域を拡大するためには,数値モデルの並列化が望ましいことが確認された.これは次年度の新たな課題である
|