研究概要 |
本研究は,海洋無酸素環境下で堆積した有機物に富んだサプロペル層と,無酸素環境下で形成される野いちご状パイライトに焦点を当て,堆積物形成過程における微生物活動を明らかにすることを目的としている。そのために,現在,硫化水素を伴った無酸素環境(Euxinic Environment)が存在し,サプロペルが形成されている甑島貝池と最終氷期にEuxinicな無酸素環境であった日本海の堆積物を対象として,堆積物中に創出された硫化水素環境の微生物群集の実態と地下においてそれが維持され続けるかどうかを明らかにする。研究は,(1)顕微鏡レベルの堆積ファブリックを解析し,(2)同位体地球化学分析を行い,(3)微生物の培養と生化学分析および,(4)蛍光DNA in situ hybridization (FISH法)を用いた微生物生態学的研究を行う。この4つの研究結果を総合して,堆積物のどこに((1)),何がいるのか((3)、(4))を知り,またそれらが何をしているのか((2))を明らかにする。 日本海の堆積物は淡青丸KT01-15次航海の折りにピストンコアラーを用いて採取した。サプロペル層中には1cc当たり100万個を越える微生物がおり,現在,その種構成を検討している。また,貝池調査は10月末に行った。湖底には,シアノバクテリアと硫黄酸化細菌によるバクテリアマットが幾重にも発達し,サプロペル層が形成されている。マットを形成する微生物群集組成は,現在,遺伝子レベルの検討を行っている。 サプロペル中の野いちご状パイライトと酸化的な地層(ODP,Leg 190)中のそれは異なった形態と大きさを示す。堆積物形成時に出来た一次パイライトと,地層中で出来る二次パイライトである可能性がある。形態解析を進めると共に,安定同位体測定を行う予定である。
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