研究概要 |
本研究は,自然界の試料で蒸発による同位体変動が,観測されるかを検討している. 本年はまず,スズ,亜鉛,銅の同位体分析法の検討を行った.ICP質量分析計を用いることにより,116Sn/120Snの同位体比が0.2〓程度,65Cu/63Cu同位体比が0.2〓程度,66zn/64Zp同位体比が0.2〓程度で測定可能なことを確認した.元素精製などの化学操作の際に,スズでは1〓程度の同位体分別が起こることを確認した.銅,亜鉛では化学操作の間の同位体分別は小さい. スズについては,まず考古学資料について同位体変動が見られるか検討した.その結果,中国産の青銅器で実験誤差よりも有意に大きい3〓程度の変動が存在することを確認した.青銅器のリサイクル使用に伴う,繰り返し蒸発の影響の可能性がある.蒸発実験を行い,同位体変動を再現することに成功した.これらの成果は2001年地球化学会年会で口頭発表した.今後,過去の精錬技術を検討した,蒸発実験を予定している 三宅島の2001年火山灰試料を純水で洗い,付着した成分を分析したが,スズは回収できなかった.これはスズが蒸発の際に酸化されて,水に不溶の4価のスズになったためと考えられる. 銅,亜鉛については三宅島火山灰試料から付着成分を回収することに成功した.同位体分析を開始したがこれまでのところ有意の同位体変動は観測されていない.今後,付着成分の化学組成と組みあわせた議論を行う.
|