ナノスペースにおける非線形光学効果観測システム構築の試み

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13874069
• 研究種目: 萌芽的研究
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 寺嶋 正秀 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00188674)
• キーワード: 気液界面 / 過渡回折格子法 / 表面波 / 光反応

研究概要

近年の科学技術において、ナノメートルサイズの物性やそうした環境での分子運動の情報、あるいは微少な不均一性との関連は非常に重要になっているし、これからも増々増えてくると考えられる。ところが、そうした制限された環境下での物理化学的研究はバルク中とくらべて格段に劣っている。それはそうした環境下での測定法がまだ完成していないためである。ここでは、これまで研究の困難であった気液界面での表面波ダイナミクスを時間分解で検出する過渡回折格子システムを構築した。このシステムでは、表面を2つの励起光で照射し、それによって誘起される運動を別のプローブ光で検出する。このシステムによって、初めてナノ秒からマイクロ秒と言う短時間領域で、表面でどういうダイナミクスが起こっているかを明らかに出来た。例えば、水に塩化鉄を溶かした溶液を光照射すると、光により化学反応を起こして、表面活性な物質が生成する。この物質は、表面波ダイナミクスに、大きく影響することが明らかとなり、その時間変化を解析することで、表面物性を分子の立場で理解することが可能となった。また、表面活性剤を溶かした溶液について、表面波ダイナミクスを測定し、測定しているナノ秒からマイクロ秒と言う短時間では、こうした溶質分子は表面から離れることが出来ずに、あたかも膜のように振舞うことが分かった。これは不均一な境界あるいは界面との相互作用を通した分子運動の理論構築の基になるであろう。

研究成果

• [文献書誌] J.Choi: "A pH jump reaction studied by the transient grating method : Photodissociation of o-nitro-benzaldehyde"J.Phys.Chem.A. 105. 12-18 (2001)
• [文献書誌] M.Sakakura: "Dynamics of stcture and energy of horse carboxymyoglobin after photodissociation of the carbon monoxide"J.Am.Chem.Soc.. 123. 4286-4294 (2001)
• [文献書誌] Y.Nishioku: "A spectrally silent transformation in the photolysis of octopus rhodopsin : a protein conformational change without any accompanying change of the chromophore's absorption"Biophy.J.. 80. 2922-2927 (2001)
• [文献書誌] K.Okamoto: "Translational Diffusion of Ion Radicals Created by Electron Transfer in Charged Micellar Solutions probed by the Transient Grating Method and the Taylor Dispersion Method"J.Phys.Chem.A. 105. 6586-6593 (2001)
• [文献書誌] T.Ohmori: "Thermal diffusivities and sound velocities of supercritical methanol and ethanol measured by the transient qrating method"Phys.Chem.Chem.Phys.. 3. 3994-4000 (2001)
• [文献書誌] M.Sakakura: "The structural dynamics and ligand releasing process after the photodissociation of sperm whale carboxymyoglobin"J.Phys.Chem.B. 105. 10424-10434 (2001)