研究概要 |
反転シクロデキストリンを合成するための基礎研究として,嵩高いシリル基の導入によるグルコースの環立体配座を制御する方法を詳細に調べた結果,グルコースの2,3位あるいは3,4位水酸基にTBDPS基を導入した化合物や2,3位にTBS基を導入したベータ体では環反転が起こりアキシアルリッチないす型で存在することを明らかにした.このうち,2,3-ジシリル体での環反転は初めての知見である.また,このような2,3位水酸基への嵩高いシリル保護基導入によって環反転させたグルコース誘導体を用いたグルコシル化反応ではβ選択的な反応が進行した.この反転糖を用いたβ選択的グルコシル化反応は従来の2位アシル基の隣接基関与によるβ選択性発現法の別法となる新しいタイプのβグルコシド合成法である.しかし反転シクロデキストリンの合成にはα選択性が必須であり,本法は本目的には使用できないことも同時に明らかになった.そこで糖のピラノース環を反転させ,かつα選択的なグリコシル化反応を行う基質を調整するため,3,6位を架橋したタイプの化合物を天然物であるコリラジンを参考にデザインし,その合成法を確立した.なお,研究の途上で数種類の脱離基を有する糖供与体を単一の活性化剤でグルコシドとする手法,チオグルコシドの位置選択的な保護法も開発した.
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