研究概要 |
圧力や温度変化によって電気を発生する圧電性や焦電性は,結晶がある対称性を持ったときに生じる性質である。そこで,多彩な構造を有する遷移金属錯体を構造制御モチーフにすることで結晶の対称性を制御し分子圧電体や分子焦電体をつくること,および構造と諸性質の関係を明かにすることが本研究の目的である。平成13年度の一つ目の成果は,キラルな亜鉛(II)錯体を用いて分子圧電体をつくり,その二次焦電性を観測し,大きな焦電係数が得られることを報告したことである。なぜ大きな焦電係数を持っているかを明かにすることが今年度の目標の一つであったが,これは結晶を粉砕したことで表面積が増え,温度変化によって生じる電荷も増えるためであることがわかってきた。これが,二つ目の成果である。現在この考えを実験データでうまく証明することを試みている。三つ目の成果は,粉末試料の焦電性を測定するために用いる色々なマトリクスについて評価を行い,試料の性質に応じたマトリクスをある程度見いだせたことである。四つ目の成果は今年度購入した測定機器を用いて,数MHz領域での共振特性を測定できるようにしたことである。これによって当研究室で今まで測定できなかった縦振動についても測定できるようになった。本年度は,種々の測定を行うための装置の作成や測定法の開発が主な目的であったために芳しい結果はでていないが,今後電気機械結合定数と結晶構造の関係,焦電係数と結晶構造の関係などを明かにしていく上での準備が調った。
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