研究概要 |
1.共役鎖平面の両側に置換基を配置するための分子骨格として,3,4-trimethylenethiopheneを選択し,βジメチルチオフェンを出発物質として,ビス(ブトキシメチル)基を導入したモノマーユニットの大量合成のルートを確立した。このモノマーユニットを用いて,従来法のリチオ体を経る酸化カップリングで2量体を,さらに臭素化とスズ化を経るStilleカップリングで長鎖オリゴマーのビルディングブロックとする6量体の合成に成功した。 2.ナノスケールオリゴチオフェンの合成においては,相対的にβ位が増加することに伴うα位とβ位の選択性の低下や異性体分離の困難さが付きまとうが,上記β位を全て置換した6量体ピルディングブロックにおいてはβ位の反応は不可能である。そこで,過塩素酸第二鉄を用いる逐次酸化2量化によって12量体,24量体と鎖長を延ばし,24量体の酸化カップリングで48量体と72量体を得た。72量体は共役オリゴマーとしては世界最長であり分子長は28nmに達する。 3.ペンジルエーテルデンドロンを置換した3,4-trimethylenethiophene縮環チオフェンを合成し,12量体までの被覆型オリゴチオフェンを得た。酸化状態の研究から,高酸化状態では従来のオリゴチオフェンとは異なり,10量体以上のオリゴマーにおいてもバイポーラロン種が支配的に生成することが明らかとなった。 4.将来的に絶縁被覆分子ワイヤーの金属電極との接合のために,トリフェニルメタン骨格を有する堅固な自立型トリチオールアンカーを開発した。この自立型アンカーを有するオリゴチオフェンの金電極上自己集合単分子膜が有機EL素子の正孔注入層として機能することを明らかにした。また,このアンカーを有するフラーレン連結オリゴチオフェンの自己集合単分子膜が光電気化学的光電変換素子において極めて高い効率を有することを明らかにし,最高35%の光電変換量子収率を達成した。
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