研究概要 |
1.前年度に開発した,3,4-trimethylenethiopheneを基本分子骨格として共役鎖平面の両側にブトキシメチル基を配置したモノマーユニットの大量合成ルートを確立し,6量体をビルディングブッロクとして長鎖オリゴマー合成の反応条件と分離精製条件を最適化することで,過塩素酸第二鉄を用いる逐次酸化2量化という極めて簡便な方法によって96量体までの一連のオリゴチオフェンの合成法を確立した。 2.それぞれのオリゴチオフェンを元素分析,NMRスペクトル,MALDI-TOF MS測定によって同定し,これらが完全に単分散性の単一成分共役オリゴマーであることを明らかにした。96量体は単一成分共役オリゴマーとしては世界最長であり分子長は37.2nmに達する。 3.これら一連の長鎖オリゴチオフェンの電子吸収・発光スペクトル,サイクリックボルタンメトリー測定により,有効な共役は96量体でもまだ伸長し続けていることが分かった。従来オリゴチオフェンの有効共役長は20量体程度と考えられていたが,本オリゴマーは5員環縮環によるユニット間の立体障害がほとんどなく,高い平面性を保って共役が伸長している系であり,分子ワイヤーとして極めて有望な性質を有していることを明らかにした。 4.この3,4-triethylenethiophene骨格を有するオリゴチオフェンをスペーサー部として,一端にドナー部として1,3-dithniole基を,他端にアクセプター部としてdicyanomethylene基を導入したpush-pull型化合物の合成を試み,2量体までの合成に成功した。本骨格を用いることで溶解性の向上と分子間相互作用の低減が期待でき,さらに長鎖の化合物の合成を検討している。
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